入居拒否の認知症のお母様に寄り添い、みんなで力を合わせて
要介護1、70代、女性、認知症あり
お母様の認知症の症状が進み、二人暮らしの長女様への暴言が日に日に増していく中、親子関係がギクシャクしながらも、美容師で日常お忙しい長女様はお仕事と介護を両立され、お母様の生活を支えて来られました。
しかし脱水症状をきっかけに入院された病院生活でお母様の認知症がさらに悪化。長女様は自宅介護への限界を感じられ、ケアマネージャーを介して当社に施設探しのご相談を頂きました。
病院生活をきっかけに認知症が悪化。仕事が多忙の長女様も限界に
ご要望等を深くお伺いするため、お仕事が終わるタイミングに合わせてお母様の入院先である病院で長女様に面談をさせていただきました。
長女様によると、70代半ばのお母様は数年前から認知症の症状があり、要介護1の介護認定。認知症の症状が進む中、精一杯のお世話をする長女様を、お母様は「わずらわしい」とお感じになるのか、介護する長女様に対して徐々にきつく当たるようになり、近隣住民からも徘徊など心配の声があがっていました。お二人の生活は喧嘩が絶えず、長女様も認知症の症状からくるものだとわかりながらも介護疲れから、デイやショートステイを利用しながら最低限できることだけを行う毎日とのことでした。そんな中、食欲不振や脱水の疑いでお母様が入院。今回ご相談頂いた長女様からの条件面でのご要望は、何かあった時にすぐ通える自宅近くのエリア。毎月15万以内で生活できること。予算面とエリアの2点を強く希望されました。
認知症を発症される前のお母様のご様子やご性格等を伺う中で、「寂しさからくるのではないか」「誰かが傍にいる安心感あるホーム」が適しているのではないかと長女様にお話させていただきました。そして、予算内の施設の中でも、環境の変化に慣れず苦しんでいた方でも落ち着かれた実績があり、また普段から共用部のリビングに集まる入居者様同士、スタッフの方とも距離が近い、見守りに優れたアットホームな施設をご紹介させていただき、施設見学の結果、お母様、長女様からもこの施設がよいとご納得されました。
お母様が信頼する主治医や訪問看護、ケアマネージャー様にもご協力いただき、お母様にお声がけ
施設への入居当日は、病院まで車でお迎えにあがり、お母様と長女様と一緒に入居先へ向かいました。しかし途中、お母様が知らない場所への違和感で「今すぐおろして!」「警察呼んでくる!!」「親不孝者!!」などと叫びながら、持っていた杖を振り回され車内はパニック状態に。それでも長女様の「施設へ向かってください」の言葉で施設に向かいましたが、やはりお母様からは拒否されてしまいました。
施設長さんは「部屋はあけておくから、落ち着いたらいつでも戻ってきてくださいね」と優しく対応いただき、事前情報と面談等でお母様の認知症特有の症状を理解いただけていたことでもあり、私たちはお母様の気持ちに寄り添い、いったん自宅へ戻ることにしました。
そして、2週間後の再入居に向けて長女様とご相談。何度話しても忘れてしまうお母様に対して、お母様が信頼する主治医や訪問看護、ケアマネージャーの方々にもご協力頂き、入居に向けての声掛けなど準備を徹底しました。
そして再チャレンジの入居当日は、次女様に送迎を代わってもらい、施設到着時は施設スタッフ、入居者様が玄関口でお迎えいただくといったサプライズもあり、最終的には、「母の気持ちを尊重したい」というご家族様の思いがお母様に伝わったのか、お母様は涙を流され、穏やかにご入居されました。
入居後は、施設長さんをはじめとするスタッフの皆さまがお母様のご生活やご状態に合わせて寄り添うなかで、認知症も緩やかに。感情の起伏も少なく、穏やかになっていかれました。また長女様と距離を離れることで親子関係も修復。よく一緒に外食も行くようになったとのことでした。
ケアマネージャーからも、入居に至らなかった際、ネグレスト状態が深刻になる可能性があったため、本当によかったとお声をいただきました。
ご本人様の意思を尊重しながら、私たちコーディネーターとご家族様、お母様の介護に係る関係者の皆様が思いを一つにすること。そのためには、ご家族様をはじめとする関係者の皆様が私たちを信頼してくださっていることが何よりも大切であると改めて感じたエピソードでした。